今回は,最近に読んだ書籍の中から特に参考になった内容を紹介します.書籍のタイトルは「ソフトウェアの世界でキャリアを築く Making it Big in Software」です.著者はIBMでAI戦略のCTOであり,IBM FellowでもあるSam Lightstone氏です.
今回はこの中の9章「組織で働く」の内容を紹介してみます.この章では,組織の中で働くために必要なスキルを紹介しています.例えば,信頼関係の構築や交渉の基礎,コミュニケーション術です.もし気になれば,Amazonでの購入や大学図書館のデジタルライブラリでの閲覧をおすすめします.
今年はCOVID-19の影響もありデジタルコミュニケーションを活発に行っていますが,そのデメリットが触れられていたので抜粋しました.
周りを味方にするには? デジタルコミュニケーションの罠
人から協力を得たり、プロジェクトや会社への要求を周りに理解してもらうには、いわゆる「説得力」が重要な能力となる。納得がいくよう正確な情報を駆使することなどは、説得力の一部でしかない。人を説得するだけでは不十分で、最終的には人を「味方につけ」たいのだが、それにはお互いの間に情熱や親近感、そして信頼が欠かせない。日常生活でも特定の人からのアドバイスを尊重するのは、その人への信頼があるからだ。信頼は事実や数字の根拠と同じくらい、いやそれ以上に大切だ。
信頼は数々の成功の積み重ねの上に成り立ち、多くの人との係わり合いを通して築かれる。それは、個人的に膝と膝を突き合わせながら行われる。電子メールでは出来ないやりとりだ。製品機能に関する新しいデザインやマーケティング提案書など、自分の意見やアイデアに賛同を得たいとき、その説得を電子メールだけで行ったらどうなるか。テキストメッセージには心もなければ魂もないので、当然、相手からの賛同は得られない。説得するなど到底無理だ。
賛同を得たいときには、面と向かって相手と話そう。アイデアを直接説明できるだけでなく、質問や懸念事項もその場の話し合いで解決できる。現状の話題を超え、話し合いを通して別の発展的なアイデアが生まれる可能性もある。人々を味方につけたいなら、たった5分でも直接会う(F2F, Face-to-face)ほうが、幾日にわたるメールのやりとりに比べ圧倒的に効率が良い。もちろん、5分間のディスカッションだけで(一時間であっても)、確かな信頼を一度に築けることはない。しかしF2Fは電子メールではできない信頼を築くための足がかりになるだろう。
ソフトウェアの世界でキャリアを築く Making it Big in Software (Sam Lightstone / 2012 / オーム社 / P151-152)
読んでみて改めてコミュニケーションがオンラインにシフトしたことで信頼関係の構築が難しくなっている気がしました.半年間のオンラインコミュニケーションで言語化できていなかった課題が明確に分かった気がしました.
後期は卒業課題と創成課題が対面での実施になったことで,F2Fの場面が前期よりも増えています.対面を通じて,新たに配属された3年生を含めて研究室内の信頼関係がさらに向上すると良いと思いました.