五味康隆氏から学ぶ、自動車のこれから

「電気自動車って環境に良いんでしょ?」

ご存知の通り、東京都は2030年までに都内で販売される新車すべてをハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などの電動車に切り替える方針を発表しました[1]。
即ち、2030年にはガソリンエンジン車は、新車販売することが出来なくなるということになります。

この『脱ガソリン』の動きは、世界的に進んでいます。EUは、2035年にハイブリッド車を含むガソリン車の新車販売を事実上禁止する方針を打ち出し[2]、将来的にガソリン車の販売が難しくなると考えられています。

これは、『ガソリン車は環境に悪い』という意味であり、EU等ではさらに『ハイブリッド車であってもガソリンを使うから禁止』という表れです。
もちろんガソリン車は、燃料燃焼機構を持ち、ガソリンを『燃やしている』ため、CO2の排出量は世界的に問題視されているのはいうまでもありません。

すると、規制されない車として『電気自動車(燃料電池車)』は環境に良いのでしょうか。

答えはYESではありません
(ここできっぱりNOと言えない理由もあり、後述します)

『ガソリン車は環境に悪い』『電気自動車は環境に良い』
車に詳しく無い人は、なぜそのように考えてしまうか。理由は複数あると思います。

私個人の肌感では、次の理由があると考えています。

  1. ガソリン車は走るその場で燃焼することから、運転手は環境の悪さを実感する
  2. 電気自動車/ハイブリッド車に比べて税金などの優遇がほとんどない
  3. そういう報道が多い。

ここから、電気自動車に乗り換えると次のように変化します。

  1. 電気自動車は『電気で走る』ため、CO2は排出してないから環境に良いと考える。
  2. 電気自動車は、東京都では新車を100万円近く補助金で賄って買うことができる。良い。という考え

先ほど結論を申した通り、電気自動車といえど、環境に良いと一概に言えない理由は、ただただ「電気自動車を走らせるための電気の発電でCO2を排出していることがほとんど」であることに尽きます。
環境面においてガソリン車との違いは、CO2を排出している場所だけです。

もちろん、政府も知らんぷりしているわけではありません。先ほどあげた「電気自動車を購入する時の補助金」の中には、環境省による「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」や、経済産業省による「クリーンエネルギー自動車の導入補助金」が含まれます。

つまり、再生可能エネルギーを利用することを条件に、補助金をもらうという制度です。

そういった制度が整ってくると、ガソリン車を乗ってる人たちはどう思うでしょうか。
そう、「電気自動車は『環境に良い』から乗るべき」という考え方です。

「環境に良いから電気自動車は売れる」という考えで、全てがうまくいくでしょうか。

これからの電気自動車はユーザメリットを考える必要がある

ここまでお話ししたのが、日本における「電気自動車の捉え方」の問題だとすると、
ここからお話しするのは、これからの日本に必要な「自動車の在り方」についてです。

自動車の在り方について、独自の視点を持つ方がいます。

五味康隆氏は、知る人ぞ知る日本のモータージャーナリストです。

モータースポーツの選手として活躍された経験や、自転車トライアル世界選手権の日本代表者に選ばれたこともある人で、選手引退後に、モータージャーナリスト活動を開始した特色ある経歴を持っています。

2018年からYoutubeにて、自動車の紹介動画を投稿し始め、現在では、毎日投稿による豊富な情報によって登録者は37万人を上っています。

投稿される動画は、自動車自体の紹介はもちろん、自動車に対する「これからの在り方」について、五味氏による独特な見解を示すものもあります。

五味氏のYoutubeチャンネルは、毎日投稿される自動車紹介動画である『メインチャンネル』と、より詳細にクルマについて解説する『2ndチャンネル』があります。

五味氏本人が大切にされている「独断と偏見のクルマ動画」という考え方について、私はとても尊敬しています。

今回取り上げるのは次のふたつの動画になります。

CO2削減とEVは切り離すべき
EVの見通しと今把握すべきこととは!?

まず、タイトルからわかるとおり、CO2削減──つまり『環境に良い』という考え方でEV捉えるのはやめるべきという動画になります。

要約すると「CO2削減を基軸にEVの進捗を捉えるのではなく、ユーザメリット……将来の豊かなカーライフを基軸に考えるべき」ということです[4]。
動画の中で、五味氏は自動車のことを『製品』と『商品』に分けて説明をされています。

世界的に見ると、電気自動車の生産が盛んになり、多くの「個性的な」電気自動車が登場してきています。
このような「個性的な」電気自動車が登場するには、そもそも電気自動車が多く出回っている必要があります。

日本の(純)電気自動車は、実は数え切れる程度しか存在しません。
(日本における主力的な電気自動車は、日産リーフくらい……..?最近アリアが登場しましたが)
ガソリン車規制の問題から、やっと日本では電気自動車が知られるようになったくらいで、アメリカやヨーロッパなどとは大きな温度差があります。

五味氏は、電気自動車の重要性を強調しつつ、『環境に良い』ことをメリットにしている現状の日本の電気自動車市場について、非常に強い危機感を抱かれています。

まずは『製品』をどんどん出す必要があり、また、出せる環境を整える必要があります。
「EVは電気自動車を出しました──で終わっちゃいけない」と指摘し、電気自動車は『製品』ではなく『商品』として考えていかなければならないと指摘しています。
つまり、ガソリン車と比べて電気自動車はできることがそもそも違う。そこに(本記事前半でお伝えした)環境とかいう話は全く関係ないということです。

ここでいう自動車としての『製品』は、自動車の本質『壊れずに安全に目的地まで移動できること』を指します。
ここに商品力をどうもたらすかということが重要であり、その要素は、「かっこいい」「乗り心地/乗り味が良い」など。だからこそ、プラスαのお金を払ってその車に乗るんだ。というものです。

この商品力を上げていかなければ世界に置いていかれることは自明です。
そして、この商品力を上げるには、そもそも『製品』がなければならない。
だからこそ、そもそもその『製品』すらないこの日本に対して強い危機感を持っています。

この動きは、実は携帯電話からスマートフォンに変化した流れと非常に似ていると考えています。
言わずもがな、日本は他種の「個性的な」携帯電話で溢れていた時代に、iPhoneの登場から一気に変化するスマートフォン市場に追いつけず、ほとんどの携帯電話のメーカーが勢いを失った過去があります。
そもそも携帯電話とスマートフォンは全くの別物と言えて、人々のライフスタイルそのものが変化したきっかけになります。
この流れは通信技術である2Gから3G、4G(LTE)と並行していて、5Gはもちろん6Gを踏まえて、ライフスタイルはこれからも変わり続けます。
(これらの繋がりは、実際に動画を見ていただけると、(私の下手っぴな説明より)五味氏のわかりやすい説明で納得いただけると思います。)

つまりは、携帯電話からスマートフォンに変化した時にできることが広がったように、ガソリン車と電気自動車にもできることが全く異なります。
この電気自動車が持つ商品力を”もの”にした企業が、これからの自動車を引っ張っていくと私は考えています。
(圧倒的な商品力を持つテスラ社の電気自動車の勢いは、言うまでもありません。)

テスラ社の電気自動車は「家電製品」と比喩されることが多いです。私もその通りだと思います。
その魅力こそがテスラ社の「商品力」であり、『電気自動車を買う理由』になるとも思います。

『環境に良い車』であることが、ユーザメリットになるか。ということが前半の問いになります。
次の記事では、この部分についてもうひとりの考えを紹介できればと思います。

参考資料

[1] 『[東京都、30年までに新車販売すべて電動車に 知事が目標 – nikkei.com -](https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB084YC0Y0A201C2000000/)』
[2] 『[EU、ガソリン車販売を35年に禁止 -nikkei.com- ](https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73887760V10C21A7MM8000/)
[3] 『[再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業 -env.go.jp-](https://www.env.go.jp/air/post_56.html)』
[4] 『[EVの見通しと今把握すべきこととは!?](https://www.youtube.com/watch?v=3HIiMfydP70)』 動画内 7:18 テロップ文章引用

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